仏遺教経
根の放逸による苦を退治する


 あなた方僧侶方よ、あなた方はすでによく戒に安住しています。それゆえにこそ、眼・耳・鼻・舌・身という五根を制御すべきです。放逸にして、[色欲・声欲・香のこだわり・味のこだわり・感触のこだわり、あるいは財欲・色欲・食欲・名誉欲・睡眠欲という五つの] 欲望に陥ることがないようにしなさい。それはたとえば、牛飼いが杖を見せて勝手放題に他人の植えた苗を荒らさせないようなものです。もしも五根を好き勝手すれば、欲望を制御する畔がなく抑制することができないだけでなく、暴れ馬の轡を押さえて牽制しなければ、人を引きずって穴に落とすようなものです。強盗の被害は、苦しくても、この人生一代のことです。しかし、五根 [による欲望] という賊の禍は次の世代まで続き、その害毒たるや甚だしいものがあり、慎まなければなりません。それゆえに智慧ある人は自制して [欲望に] 従わないのです。この五根をもつことは賊に対するように、勝手放題にならないしなくてはなりません。たとえ、この五根を好き勝手にしたとしても、みな近いうちにその消滅を見ることになるでしょう。


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