小林秀雄講演

第一巻 文学の雑感より

小林秀雄
新潮CD



本居宣長や大和心について語ってる



中略)知識と、反対のものを大和心というのです。
だからこういう、大和心とか大和魂という言葉がおそらく、
女が発明したんであろうと思うのはですね
そのころ知識、学問というのはみんな男がしてたでしょう。
しかもそれはみんな漢文だったでしょ。
大和の言葉ではないんだね。
漢文ばかりやってると、どうして人間はこうも馬鹿になるか、と宣長は考えたのです。
だからこういう歌でもそうでしょ。
こんな歌を詠むような亭主が、これがその頃の一番の博士です。
文書博士です。おおえのまさひらというと大江家では代表的な博士です。
こういう博士がだね、こういう、馬鹿な歌を詠んでるんです。
そうするとその女房が、「なんと うちの亭主は馬鹿だろう」 とこう思ったのです。
けれどこの、馬鹿になる元は、学問にあったのです。
今とおんなじじゃないか?今なんか学問をしている奴が一番馬鹿だろう。
そう思わない?君。それは、学問が 人間を馬鹿にするんです。
つまり人間の生きた知恵をだね、学問が奪うんです。
本当なら学問てもんはね、人間の知恵を君、生かさなきゃならんものでしょうが。
それを今 逆に働いていることを諸君はよく感じないか。
今の学校なんか見てみ、感じるだろう。
あれは何が元だ?何が元かというと学問なんです。
それはみんな利口になったから、ああなったんです。(以下略


シニカルな目線で世間を小馬鹿にする学生とかよくいるが、自分が賢いと思っているだけで、
実際は単なる無感傷の不活性脳のメンヘラー予備軍なんだよな。感受性の高い子はそうはならない。
スノッブでシニカルな者は批判能力こそ高いが自己を批判する事はないし自分はたいしたもの持ってない。
感受性が高くても人生の充実にしか寄与しないと思うし活性脳でも論理的に洗練されていくとは限らないが
感受性のない人間が世間とか自然界から隔離して学問ばかりやっていたら大切なものを失うようになる。
最悪な者になるとサイコパス化して科学カルトとなり社会のがん細胞になる。人間性を取り戻すべき。