愛の分類・憎しみの分類

ベザント博士:『意識についての研究』


 愛は、下のものに向けられるとき「慈悲」である。上のものに向かう愛は「崇拝」である。上から下へ向かう愛と下から上へ向かう愛の間には、一般に、共通したいくつかの特徴がある。この外に、夫と妻の間とか、兄弟と姉妹の間のふつうの関係には、対等な者の間における愛の表現のさまざまな形がみられる。愛はここでは、お互いのやさしさやお互いの誠実さとして、また思いやり・敬愛・相手を喜ばせたい思いとして、また相手の望むところを満足させるように素早く気を配るとか、寛容とか慎しみといった形で表現される。ここには上から下に向かう愛の情動と同じものも認められるけれども、それら凡てに相互性が認められるという点がこの場合の特徴である。したがってわれわれは、対等なものの間における愛の共通した特質は「助け合う欲求」である、と言うこともできよう。
 このように、「愛の情動」の主な区別として、われわれは「慈悲」「助け合う欲求」「崇拝」の三つにあげることができる。すべての愛の情動はこの三つのいずれかに分類できるであろう。というのは、すべての人間関係は、上から下への関係、対等なものの関係、下から上への関係という三つに分類されるからである。
 下へ向けられた憎しみは「軽蔑」であり、上へ向けられた憎しみは「恐怖」である。同様に、対等なものの間の憎しみは、怒り・闘争心・侮蔑・暴力・攻撃・嫉妬・高慢などとして示される−−これらすべての情動は、人間と人間が敵対者となり、手をつなぐことを拒んで互いに対立し合うときに、お互いに反発し合う作用である。対等なものの間における憎しみに共通して認められる特徴は、したがって「傷つけあい」であるといえよう。憎しみの情動の三つの主要な形は、したがって、「軽蔑」「傷つけあう欲求」「恐怖」である。